ム着てほしくないと言っていた。どうせ女房も嫌がるだろうなと思って、お断りしようと女房と話したら、「パパ、初代監督はやりたくてもやれないよ」と言われました。僕も怖いもの見たさがあって、50数年、何にもないところからチームを作ることはなく、みんな親会社が変わるだけで選手はいる。だけど楽天は最初選手がいない中で作り出したチームで、どうなるのかと大変でしたけど、すごく面白かったです。オーナーのおかげでこういう経験をさせていただいたと思っています。矢島 楽天もスポーツの組織を持つのは初めてでしたよね。田尾氏 どういう組織なのかわからないままスタートしました。やはり最初はみんないいこと言ってくれます。僕も初めてオーナーとお会いした時に話したのは、「ユニフォームに企業名をつけないのはどうですか。アメリカがそういうのはつけないでしょう。」そういうユニフォームにするのもかっこよく見えた。あの当時、三木谷さんは39歳ですよ。そのオーナーに1回言ってみたら、「いいですね」と言ってくれて、やはり若いオーナーは柔軟性がある。こういうオーナーのもとでやれたら、これはいいチームできるかもしれないと思いました。でも、出来上がったユニフォームには楽天と書いてある(笑)。矢島 1年間はかなり苦労されましたよね。田尾氏 そうですね。まず4月に11連敗したことにも、僕が呼んだコーチを2軍に落とせとか言われて、いやいやこれはコーチのせいじゃない。力がないのに他球団に勝つのは無理だ。やはり早く力のあるチームを作ることだ。僕は3年間の僕の仕事はプロレベルの最下位球団を作ることでした。プロレベルの最下位はどういうものかというと、9ゲームで4勝5敗ペースをずっと年間続けていくと借金16になる。これが最下位です。5勝4敗でずっと行くと、貯金が16で優勝争いする。今年のセリーグはほとんどその枠にいます。だから、僕の仕事は4勝5敗チームを3年間で作っていくことだなと思っていて、それで三木谷さんにも、数字で全部ご説明しました。今、うちは2勝5敗ペースです。それで失点が6.1です。得点は3.5いくつです。この3.5を来年4にはできる自信がある。だけど失点6を4にするのはまだ時間がかかると具体的な説明をした。ゲームをしながら他球団の監督に僕はもうお願いばかりで、来年この選手いただけませんかと王さん、バレンタイン、みんなにお願いしていました。王さんは本当にすごいなと思ったのは、いや、こんな弱いチーム作っちゃいかんっていうわけです。プロ野球にこんな弱いチームがいたらいけないので、できるだけ協力すると。矢島 やめようという決断をされたのは大きなきっかけが。田尾氏 クビと言われて。8月に2回目の11連敗をした時に、「次のゲームで負けたら休養しろ。これはもう球団の方針だ」「わかりました」と言って納得していたのですけど、「勝ったらどうするか」と聞いたら、「勝ったら今まで通りやってください」と言われた。その一言が、僕にとってちょっとカチンときた。1つの勝ち負けでそんなに態度が変わるのかと。代表から聞いたのですが、どうせオーナーからだろうなと思って、電話を入れてもオーナーは出ない。それで、「僕は今回金儲けに来たわけじゃない。なんとかいいチームを作りたい。そういう気持ちでみんなにもお願いして集まってもらう。そういうチームを、1つの勝ち負けで、方針がガラッと変わるようなそんな薄っぺらいことやられたら困る」と留守電を入れて切った。それから辞めるまで一度もお会いしなかった。矢島 もし田尾さんがタイムマシーンで戻って楽天の監督を引き受けたなら、その間、何を変えます。田尾氏 まずオーナーと仲良くならないといけない。僕は喧嘩しているつもりはないですよ。三木谷さんとお会いした時には、僕も1年目の監督、オーナーからしたら不安でしょう。直接なんでも言ってください。僕はお聞きしますからとそういう風に言って、わかりましたって言ってくれますけど、1回も直接ありませんでした。必ず部下を通してきました。矢島 各球団でGMとか。いわゆる代表とは違うポジションの方が結構おられますよ。ああいう方々がもし楽天におられたらどうだったんですかね。田尾氏 あの当時、GMはマーティ・キーナットっていうのが最初いたんですが、マーティもすぐポジションを変えられた。オーナーに意見言える人が誰もいないので、僕がやはり言うしかない。僕は自分が正しいと思うことしかやらないよと言いました。だから、それが嫌だったら、もう早くクビにしてくださいと、最初から言っていたのです。 だから、いつクビになってもいいっていう気持ちでいました。矢島 出してこういうチームを作っていく、そのためには戦略もここは足らないということもはっきりと全部説明されたけども、三木谷さんご自身は、野球で生計を立てられた方じゃないので、感覚があってもわからないところがありますよね。そこを直接田尾さんがご説明しないといけないところもあるけども、三木谷さんが信頼した人間が説明しないといけないところもありますね。田尾氏 誰に聞いて、自分は結論出しているのかなっていうのはちょっとありましたね。矢島 はITをわかってない人が結構います。ITがこんな難しいと言ってもなかなかわからない。それで、あいつはあかんと言っている人が結構います。ものすごく似ていると、今聞いてて思いました。現場のことをやはりずっと回しているメンバーが、経営者とは違う視点でどうしても言ってしまうところがあって、そこがぶつかる時が結構あります。田尾氏 特に楽天の場合は、オーナーの一言で決まっちゃう組織なのです。それまで色々みんなで相談し合って結論を出したさっき田尾さんがおっしゃったように、いろんな数字をITの世界もそういうことが結構あって、今の経営者6Yasushi Tao Takao Yajima
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