CIO LoungeMAGAZINE_2024spring
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技術経営士の会の想いとは矢島 現在、技術経営士の会の会長をされておられますが、どのような趣旨、組織なのか、ご紹介いただければと思います。山下様 10年前位にできた組織で、私は3代目ですが、前任の日本電気元会長の矢野さんから引き継ぎました。大学の理工系を専攻し技術的な勉強をしてきた人は、従来は研究開発や技術者で終わっていましたが、ここ何十年か、矢野さんも私もそうですが、技術系の経営者が出てきました。技術系の人間が研究開発だけではなく組織マネジメントの領域も経験させてもらったのです。これからの会社はそういった技術の素養を持って経営を行っていく。逆に技術のことを理解できないと、今のAIの話もそうですが、経営自体ができない時代になってきているのだと思います。せっかく技術者として経営に携わらしていただいた経験を社会に還元しなければと思っています。これからの経営者も技術的な問題に悩むと思いますので、そういった技術と経営の両方を経験した人間がメンターとして関わっていく必要があるんじゃないかというのが最初の志です。もう一つは、自分たちが受けた恩恵を社会に還元して、さらに増やしていかないといけないというのがこの会の趣旨です。矢島 私も多くの経営者の方とお会いする中で、未だに、僕はIT弱いんだよって胸張って仰る方が多いんです。胸張って言ってもらうと困るんですけど、欧米では絶対言いません。欧米の経営者でITが苦手だと言ったら即クビです。ITだけではなく、テクノロジーのベースや動向、さらに先を読む力、これが経営者にないと絶対駄目だと思います。技術経営士の会で、経営者の悩みをサポートしていくことは非常に重要なことだと思います。山下様 昔は一つの技術のライフサイクルが長かったため、ある製品が開発されると、マイナーチェンジを繰り返し20年、30年と続けることができました。マーケット調査で消費者はどんなテレビが欲しい、冷蔵庫にはどんな機能が必要か、そのような情報を集めて、少しずつ形を変えてマーケットに出して割のSEも大半が大企業にいますので、中小企業にはほとんどいないということです。山下様 要員を増やしていかないとだめです。アメリカの場合、7が内にあってと言われていますが、実はかなりの部分は外から臨時的に雇っています。要はプロジェクトマネジメントを自らやっているということです。日本の場合は人が少ないから、そんなことさえできない。人材をプールするような形で支援しなければいけないと思うんですが、基本的なIT人材自体が少ないのです。丁度20年ぐらい前に経団連の高度情報通信人材育成部会の部会長をしました時に、今後の社会はソフトを中心としたIT能力があらゆる産業で競争力の源泉になるとの問題意識から、国家レベルで高度IT人材を育成する仕組みを提言としてまとめ政府に提案しました。IT担当大臣を含め賛同していただく方も多くいましたが、結果的に政府予算がつかず道半ばで頓挫しました。経団連は最後まで頑張ってくれたので悔やまれます。7:3はひどいですね。もっと社内の情報システムいくというのが商売の中心でした。それに対して今は例えばiPhoneなどは出てから世界に普及するまでの時間はあっという間です。半年とかで世界中に拡がるのです。そして次の技術がどんどん出てくる。スティーブ・ジョブスは開発するときにマーケット調査なんか全くしていないと思います。自分の信念でやる。だからマーケットより技術開発のインパクトがずっと大きい。生成AIなんてまさにその最たるもので、出てきたとたんに世界中で一番のキーワードになりました。このように激しく動く技術に対して、自分の会社の経営をどのように変えていけばいいのか、むしろ技術に対する許容度や関心、理解力とかが経営者に求められてきているわけです。そういう時代だからこそ、我々の経験が多少でも役に立てばと思います。技術のことは、ノータッチでいいんだと思っている経営者は結構いますが、それでは、これからの時代、ビジネスだって勝ち残って行くことなどできません。エコシステムをどう作るか矢島 ようなコミュニティを作っていくことの重要性を書いておられますが、私もまさに同じ価値観を持っています。日本でそういうことを広げていくための要素や必要性、もしくは可能性というあたりについてどう見ておられますか。山下様 ければならない時代ですから、やはり会社の中の縦割りを廃止していかなければならない。アメリカもヨーロッパもそうですが、業界の中で標準化をきちっとやっています。要は戦わなくていいところは、どんどん業界単位で標準化していくのです。例えば、私が法人営業やっていて製薬会社にSAPを入れた時、笑い話のようですが、全部伝票が違うわけです。請求先ごとに、数百社ありましたが、数百社の伝票が全部違うんです。アメリカはインボイス等である程度統一されていて帳票の数は少ない。一方日本は競争力の向上に役立たない無駄なところにIT投資がされているので、投資額の割に投山下さんは著書で社会システムやエコシステム、協業の一つは、人口減少という問題をシステムで解決しな6Toru Yamashita Takao Yajima

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