CIO LoungeMAGAZINE_2024spring
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日米経営戦略の考え方の相違山下様 それは先ほどもお話ししたグローバル化しなくてはいけないとアメリカの会社を買収して、現地を見て、お客さんに会いに行きますと、あっと思ったことが一番のきっかけです。リーマン・ショックの時に、日本ではCIOがみんな大変だと言っていましたので、当時、よく豊洲に来られていた日本のガートナーの日高さんに、「アメリカも大変でしょう。アメリカは日本以上にリーマン・ショックの影響を受けているから」って言ったら、日高さんは「アメリカのCIOはみんな元気ですよ。今仕事しなければいつやるのかと、元気で元気ですごいですよ」と。何故この景気でCIOはそんなに元気なんだっていうと、矢島さんはアメリカで仕事をされた経験をお持ちなのでお詳しいと思いますが、アメリカは景気が良くなったら人を雇い、まずは人を増やす。もちろんIT投資もするんですが、IT投資って効果が1年か2年かかる。一方、不景気になると、アメリカは逆にIT投資をする。工場も休んでいる時だから、この機うに思います。今のお話、手前みそですが、松下幸之助翁の思想がまさにそれなんですよ。〝水道哲学〟なんです。大量生産して、安くするのは単に儲けるためではないんです。松下幸之助翁が丁稚奉公していた時代に、よその水道を勝手に開いて飲んでも、そこの主人に怒られるどころか、「大変やな、なんぼでも飲み」と飲ませてもらった。なぜだろうと考えた結果、これはどんなものでも大量に安く世の中に広がれば、みんなが幸せになるはずだと。だから物をいっぱい安く作って、世の中にどんどん出そうと、これが水道哲学なのです。山下様 哲学〟そのものですね。蛇口をひねったら、電気、ガス、水道と同じように、コンピューターリソースが使えるようにするんだと、回線を独占している電電公社しかできないことです。まさに水道哲学です。コンピューターの水道哲学、我々は、それを〝コンピューターユーティリティー〟と言っていました。当時それを目指したのです。デジタル時代の経営戦略とは矢島 の30の提言』という本を出版し、山下さんにも読んでいただきましたが、一方、山下さんからこの『デジタル時代の経営戦略』という本をいただきました。この本は何年前になりますか。山下様 10年ですね。矢島 でもそのまま通じる内容で、課題認識も、私がようやくここ6、7年ぐらい、日本のデジタル化IT化がなぜうまくいかなかったか、遅れ始めたのか、CIOは何をすべきかということについて、この本を出しましたが、山下さんはすでに10年前にここに書かれており、本当に感動しました。その原点がコンピューターだけではなく、労働生産性とコンピューターの両輪で考えていなかった部分の課題というのを、山下さんの『デジタル時代の経営戦略』を読んで強く感じたのです。電電公社が言っていたことは、今お伺いした〝水道少し話が変わりますが、『DX時代を打ち勝つため私が感動したのは、ここに書いておられる内容が、今会にシステムを入れ替えて人を減らしてしまおうと、大胆なことをやるわけです。日本の場合は、社内失業が増えるだけで、IT投資しても人は減らない。日本は景気が良くなって仕事が増えてくると、アメリカみたいに人を簡単に増やせないので設備で代替しようと設備投資をする。アメリカと日本で物の考え方が全く逆なのです。矢島 た。なぜなら、日本の現場は非常に賢く強かった。特に日本の製造業は現場力で、トヨタも私がいた松下もそうですが、現場が製造業を支えてきました。改善活動など現場の知恵で、自分たちに合うような仕組みを作ってきたんです。だからそれを減らすとか切るとかいうことは、経営としてもできない。そこには日本の経営の素晴らしさもありました。それも事実だったんです。矢島 「社長、10年後を考えましょう」と、10年後を考えたときに、日本は人口減で人が足らなくて雇えない時代だから、同じ作業をある程度品質を保てる形を作らない限り、「もう現場に任せた」という世界はすでに通じない。この転換をこれから日本がどうしていけば良いのかが、我々の一番の悩みなんです。山下様 はこれから20年間くらいがITのチャンスです。アメリカは外科手術でやってきたけれど、日本は漢方処方で組織を直すのに少しずつやってきて、ようやく効いてきた。人の流動性も高まってきており、すでに終身雇用でもありません。場合によっては移民とか外国人の方にも働いてもらわなければいけない。そうでないと圧倒的に人がいないって事です。人がいなくなると、まさにITで賄うしかないわけです。矢島 属し、3割がベンダーです。だから企業が方向性を決めて、テクノロジー等をサポートしてもらう。逆に日本は7割がベンダーで、企業が3割、それでは当然ITに疎くなります。その3当時、そんな話は経営者に受け入れてもらえなかっ最近、私もいろんな経営者の方にお話するのですが、そういう意味で、10年前から考えていますが、日本もう一つ感じているのは、欧米ではSEの7割が企業に  10年後の日本、これからがチャンス!5Special Dialogue

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