一つ目の日本一は、日本中で一番失敗した数が多い酒蔵であるという点です。これは自己申告ですけれど、だいたい皆さんがそうだろうと頷いてくださいます。もう一つは、製造スタッフ数日本一です。現在製造スタッフは170名おります。雑誌の情報でしたが多分そうだろうと思います。第二位が奈良のさる大メーカーで91名、新潟にもいくつか酒蔵がありますが、どの酒蔵もだいたい50名くらいかなと思います。それで考えてみると、うちはケタ外れにでかいのです。これはなぜかと言うと、一つには、人手をかけることによって良いものができる。デジタル化が発展することによって細部まで見えるようになってくる。細部まで見えるようになるとそこに人間が対処することによっていいものができる、ということで増えてきたと思います。ただ、これだけでは説明しきれないと思うのです。もう一つの理由は、うちが、最終の製品にブレがあることを容認しているからです。獺祭はある程度樽毎に少しずつ違いますが、私たちは、それはそれでいいのだと言っています。例えば、米も違うし気候も違うし、造る度に毎回違うのだと。同じものを造ろうとしないわけです。そうすると、各工程で常に最高のものを目指していくことが容認できるのです。たとえば、自動車を作るとします。自動車って、エンジンを作るところがあって、シャーシ、サスペンション、ボディーを作るところがあります。各工程に分かれますが、今日はある工程ですごくよかったけど、明日はどうなるかわかりませんじゃ、困りますよね。よすぎても困るし、ある一定の所で押さえないといけない。ところが、私たちの酒の場合は、各工程で突き抜けて作っているわけです。工場では毎回毎回一番いいものを作っている。発酵管理にしても毎回最高のものを管理して作っています。そんな形でやっていますが、私たちはこれから先も生き残っていくために、世界に出ていかなくてはならないでしょ。世界にでていこうとすると、やっぱりワインが仮想敵になりますよね。ワインと戦っていこうとした時に、ワインではたとえば、矢島 我々のITの業界ではいろんな企業にITをご支援桜井会長 その意味では、そうやっていい商品を作らないと矢島 お客さまに喜んでいただけたら、結果的に自分た熟成とか、ぶどうの産地はどうしようとか。ワイン造りは、西洋文明の中できっちり作り上げられてきたものじゃないですか。そうしたものとモロにぶつかっていこうとすると、やっぱり私たちは日本的な手間をかけるというところとでぶつかって行くしか方法がない。これから先、ワインに立ち向かっていく方法があるとしたら、手間をかけるということを追求していくしかないと考えました。そう決心してやっていくと人が圧倒的に必要なわけです。うちの規模をいうと、おそらく売上の数量でいえば、日本で10何番目にしかすぎません。金額だって、純米大吟醸だけですので、4番目くらいになります。一方、人数でいうと、第2位の酒蔵の倍近い人数を投入していますので、ご理解いただけると思います。ワインとかシャンパンとかそういうところと伍していこうとするとちょっと別の価値観をもっていくしかないということでこうなってきているわけです。したり、オファーしたりしていきます。そうすると、だいたいの経営者から、ITを導入したら何人減らすことができる?データを収集したらどれだけ人件費が減り生産性があがるか?と聞かれることが多いです。ところが、桜井会長にお伺いすると、データを取れば取るほど、人手が必要になり、そして人手をかけることで、よりよい商品を造ることができると。データを取るのはいい商品を作るため、よい経営をするために必要だというお話しをいただいて、これは素晴らしい話だなと感じた次第です。売上が作っていけませんし、売り上げがあがれば当然利益もついてきます。酒蔵の仲間に「あまり原価、原価というと、どんどん縮んじゃって伸びないぞ」とよくいうのです。桜井会長 平均年齢は28歳くらいです。矢島 そうなのですか、平均年齢が20歳代とは、本当に素桜井会長 こちらこそ、どうもありがとうございました。ちも繁栄できると、そういうところにもっていこうと思えば、やはり喜んでいただける商品をきちんと出していこうと、こういうロジックですね。先般、そういうお考えを実現されている本社・工場にお邪魔して拝見する機会をいただきました。社員のみなさんは平均年齢も若いですし、一人ひとりがイキイキ仕事をしておられる。目の輝きがみなさん全然違うので羨ましいなと感じたところです。晴らしいですね。今日、私がなぜ桜井会長に来ていただいていろいろお話を聞きたかったかというのが、大半の方にご理解いただいたのではないかと思います。本来ですと皆さんからいろんな質問をお受けするという形を取りたいところですが、時間の関係もありますので、このあたりで終了したいと思います。ただこの後の懇親会で獺祭の3種類の飲み比べ、「遠心分離」もいただけるということですので、楽しんでいただければと存じます。本日は、本当にご多忙の中、わざわざ大阪までお越しいただきありがとうございました。どうぞ皆さま、桜井会長に盛大な拍手をお願い致します。7Special Dialogue
元のページ ../index.html#8