CIO Loungeの相談支援事例:株式会社Mizkan J plus Holdings(ミツカン)
企業背景とDXの取り組み
1804年に創業し、昨年220周年を迎えたる食酢最大手のミツカンは、DX(デジタルトランスフォーメーション)にも積極的に取り組む企業として知られています。現在、ドライ製品はスクラッチ、チルド製品はERPパッケージで運用していますが、国内事業を対象に両者を別の新たなERPパッケージに統合する計画を進めています。この「ビッグバン導入」(工場と物流、EDIを除く)は、2021年に構想を開始し、2025年の移行に向けて準備が進んでいます。
相談のきっかけ
Mizkan J plus Holdings情報システム部の松下美幸部長が中部地区のエグゼクティブイベントでCIO Lounge理事と意見交換を行った際、「今後も何か気づきがあるのではないか」と感じ、その日のうちにメールで相談を始めました。
初回の相談
当時の状況について、同部の武田好史主任は「新ERP導入後の運用保守をどうしていくか、Webなどの一般情報から得られるものが少なかった」と話します。初回の相談では、矢島孝應理事長も参加し、ミツカンが導入予定のERPパッケージを陣頭指揮を執って導入したCIO Lounge正会員(以下、正会員)が助言を行う方針を伝えました。
具体的なアドバイス
第2回の相談では、S4/HANA導入経験がある正会員のCIOから以下のアドバイスがありました:
- 「計算値の在庫での移行は危ないので、実棚をして移行したほうがよい」
- 「開発ベンダーのハイパーケアは3~6か月、3か月後にレビューミーティング、6か月目にKPIモニタリングをする」
第3回目の相談では、初回の移行プロジェクトに失敗したものの2回目ではベンダーを変更し成功につなげた、同じく正会員のCIOより体験談が紹介されました:
- 「ERP導入は既製服に合わせるようなもので、現場の入力は増える。ある程度カスタマイズはするが不便になる、ということを現場に早く伝えた」
- 「移行テストで漏れていたシナリオが見つかり稼働2か月前に対応することになった」
- 「1回目の失敗時に行ったアドオンを査定し、2回目に臨んだ。その結果、ほとんどアドオンなしになった。テンプレートを決めて変更手順を決めたことでアドオンは減らせた」
相談者の評価
今回の相談について、同部の桝田浩司課長は「導入直後や1年後の保守について生の声を聞けたことが貴重だった。悩ましかったことが多い中で、準備について『王道的に進んでいる』とコメントをもらったことが自信にもつながった」と話し、松下部長も「教科書通りでない実際の事例を基に、経験者だから言える『あの時こうしておけばよかった』という『未来につながる過去の失敗談』が学びにつながり、我々としてどうしていくべきかにつなげられた」と評価しました。
ミツカンのDX推進
ミツカンは「経営の環境変化に対応していくにはこれからの時代はクラウドである」という経営トップの理解もあり、「デジタル化方針」を加速してきました。MizkanHoldingsの執行役員も務める松下部長は「現在利用しているERPパッケージの老朽化と担当者の高齢化という課題を一気に解決するためには、DXを一度止めてでも土台をきれいにしたい」という強い思いで今回のプロジェクトを推進してきた」と話し、委託会社の50人を含め計100人を引っ張ります。
CIO Loungeへの期待
今回の案件は、同様の事例に先進的に対応してきた正会員が相談相手となり、経験を共有してきたことが解決の糸口につながりました。松下部長は「1社でできることは限りがある。CIO Loungeが各社をつないでもらい共同でできる体制作りにつながれば」と期待の声を寄せてくれました。