新しいテクノロジーと共に、“be ambitious”マインドで!

CIO Lounge正会員・田口 稔

2023年3月、ニッポンハムグループは北海道北広島市に、北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」(写真1)を核とした「北海道ボールパークFビレッジ」を開業しました。「自分たちの町にボールパークを建設したい」。北広島市の皆さんは、新千歳空港と札幌の中間に位置する北広島に球場を誘致するために大変なご苦労されたと聞きます。その根底にあったのは文字通り、札幌農学校クラーク博士の「Boys, be ambitious(青年よ、大志を抱け)」の精神だったとのことです。

写真1:話題を呼んだ、北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」(出典:北海道ボールパークFビレッジ)

さて、1987年に日本ハムに入社後、IT部門に配属され、IT戦略部長を務めた私は2021年に日本ハムシステムソリューションズ(NHSS)の社長に就任しました。グループのシステム会社で従業員数は約200名。決して大きな会社ではありませんが、責任者として、(1)NHSSの経営基盤を強化、(2)グループの発展をITで加速・推進する、何よりも(3)従業員が真の幸せと生き甲斐を求める場とする、を実現しなければなりません。新型コロナが蔓延していた時期でもあり、どうすべきか思い悩みました。

 数カ月の間、検討を尽くした結果、かっこいい言葉や耳障りのよいメッセージではなく、自身が仕事を通して得たことや感じたこと、想いを率直に発信しようと考えました。具体的には5つのチャレンジ項目(C)と「Think!」をスローガンとして発信したのです。同じ立場の皆様に少しでも参考になればと思い、概要を説明させていただきます(図1)。

図1:5Cチャレンジと+THINK

チャレンジ項目の一丁目一番地は、風通しのよい組織・風土を作るためには絶対に欠かせない「コンプライアンス」についてです。会社も個人も不幸となるハラスメントは、絶対に許さないとの思いを込めました。2つ目は、仕事を進める上で非常に重要となる「コミュニケーション」、3番目は、仕事を行き当たりばったりではなく、自身が主体的に計画を立て進めてもらいたいとの考えから「シナリオ」を掲げました。

 4番目は、従来のやり方にこだわることなく、創造力を発揮しチャレンジグな目標に主体的に取り組んでもらいたいという意味を込めて「クリエイト」、最後の5番目は「コミットメント」としました。自分が立てた目標に執着心を持って達成してもらいたいという思いからです。Think!については説明不要かも知れません。自ら考えを尽くし、自分の言葉で遠慮せずに発信・主張して欲しいとの意図を込めています。

 もちろん、一度発信しただけでは従業員には伝わりません。コロナ禍でフェイスツーフェイスのコミュニケーションが難しい状況もありました。そこで従業員とのコミュニケーションを図り距離を縮めるため、いくつかの施策を実施しました。1つが一人ひとりと面談する「社長雑談ミーティング」です。仕事に対する思いや普段感じている問題に加えて趣味などプライベートな話まですることで、従業員の考えや悩みを理解すると共に私自身、いろいろな気づきがありました。

 コロナ禍で社内のイベントや飲み会などができず、顔と名前が一致しないといった声が聞こえる中、一風変わったこともやりました。TV番組の「アメトーーク!」をご存じでしょうか? それに倣ってゲストやテーマを設定し、私自身がファシリテートして動画を作成し、配信するものです。その名も「タグトーーク!」。新入社員やキャリア採用者、海外駐在員を迎えて、人となりをインタビュー形式で紹介しました。社内でのコミュニケーションの強化策ですが、突っ込みもボケもあり、従業員のウケは良かったようです。

 ゴルフ場で実施した「NHSSゴルフNo1決定戦」も、「タグトーーク!」で動画配信しました。ゴルフ好きの従業員の好プレイや珍プレイ満載で、大いに盛り上がりました。 このほか「リモート職場参観」も行いました。家族の方を職場に招待して実施していた職場参観ですが、コロナ禍のためリモートで翌春の新入社員や従業員のご家族も招待して実施したのです。

 手を変え、品を変えつつも一方通行では不十分です。そこで毎期末に、全従業員に無記名で「社長通知簿」を付けてもらいました。「大変よくできました」から「がんばりましょう」までの私に対する評価に加え、会社や職場をもっとよくするための意見などを書いてもらうわけです。改善できることは改善し、結果をフィードバッグします。通知簿の結果は幸いある程度の評価でしたが、私自身の発言の影響が思ったより大きいことや、想像した以上に従業員が私のこと見ていることを再認識させられました。

 冒頭で示した北海道ボールパークFビレッジはニッポンハムグループにとってチャレンジングな取り組みです。思い返せば私自身、ITの可能性の広がりを感じながらグループ発展のための変革やチャレンジングな気持ちで取り組んできたように思います。

 今日、生成AIをはじめとするテクノロジーの進化には目を見張るものがあります。当社の従業員のみならず、システム、ITに携わる方には目の前の課題・難題に立ちむかうとともに、決して縁の下の力持ちだけではなく、新たなテクノロジーを用い、高い視点・視座の「be ambitious」マインドで、社内の関係者やステークホルダー、オーバーに言えば日本の発展のために活躍してもらえれば大変うれしく思います。

筆者プロフィール

田口 稔(たぐち みのる)

1987年、日本ハム入社。システム部門に配属。2016年同社IT戦略部長就任。ニッポンハムグループ全体のIT戦略企画・立案、全社基幹システム刷新、プロジェクト推進などに取組む。2021年日本ハムシステムソリューションズ社長に就任。CIO Loungeには2023年より参加。趣味は、ファイターズ応援といつまでたってもうまくならないゴルフ(2023年8月に北海道でのゴルフコンペで、偶然に偶然が重なり人生初のホールインワンを達成し、本人もビックリ)。